『ブランド戦略とは何か!(その4)』 …ブランドはエクイティ(資産)です。
…前回号のつづきです。
デービッド・A. アーカーによるブランドエクイティの概念は、
マーケティング理論とビジネス戦略における革新的な偉業と言
えます。それまで多くの企業がブランドを単なる名前やロゴと
して捉えていたのに対し、アーカーはブランドを価値のある資
産、すなわちエクイティとして考えるべきだと提唱しました。
彼のブランドエクイティモデルは、ブランド認知度、ブランド
忠誠度、ブランド連想、知覚品質、そしてその他の所有資産の
5つの主要な成分を包含します。これらの構成要素が全て揃う
と、ブランドは単なる製品やサービスを超えて、消費者の心に
強い影響を及ぼし、競争優位性を生み出し、価値ある資産とな
るのです。
アーカーのブランドエクイティの概念は、ビジネスリーダーに
対してブランドが企業にとってただの名前やロゴ以上のもので
あるという認識を広めました。ブランドは企業の成長と競争力
における重要な役割を果たし、それに投資することは企業の財
務的な成功に直接寄与するという考え方が、彼の理論により広
まったのです。
その結果、ブランドの価値を定量的に評価し、その構築と管理
に対する戦略的なアプローチが生まれました。これにより企業
は、ブランドの価値を最大化し、顧客との深い関係を築くため
の具体的な方向性を見つけることができるようになりました。
このアーカーの業績は、現代のブランドマネジメントとマーケ
ティング戦略に深く影響を与えています。
中小企業がアーカーのブランドエクイティモデルに基づいて行
動する際の具体的なステップについて言及します。
◆1. ブランド認知度を高める
中小企業にとって最初のステップは、自社のブランドを可能な
限り多くの消費者に認知させることです。広告、パブリシティ、
ソーシャルメディア活動などを通じて、企業の名前とロゴ、サ
ービス内容の広報を続けることが必要です。
◆2. ブランド忠誠度を構築する
次に、消費者が自社のブランドを何度も選び、競合他社に流れ
ないようにするための戦略を立てます。これは優れた製品やサ
ービスの提供、優れたカスタマーサービス、顧客満足度の追求、
リピート購入のインセンティブ(ポイントプログラムなど)を
通じて達成できます。
◆3. ブランド連想を強化する
企業のブランドが何を表しているのか、どのような価値を提供
しているのかを消費者に明確に伝えることが重要です。企業の
ミッション、ビジョン、価値観を明確に定義し、これを製品、
サービス、コミュニケーション全てに反映させます。消費者が
ブランドを思い浮かべるとき、特定の品質、感情、経験を連想
させるようにします。
◆4. 知覚品質を高める
製品やサービスの品質はブランドエクイティに大きな影響を与
えます。品質についての優れた評価は、顧客満足度とリピート
購入を促進し、口コミを通じて新たな顧客を獲得するための基
盤を提供します。品質管理と改善には特別な注意が必要であり、
製品やサービスが約束した価値を提供し続けることが必要です。
◆5. 所有資産を活用する
ブランドに関連する他の所有資産(特許、著作権、独自の技術
やプロセスなど)を最大限に活用します。これらの資産は、ブ
ランドの独自性を強調し、競合からの差別化を助けます。
以上のステップを踏むことで、中小企業でも強力なブランドエ
クイティを築き、ビジネスの成功を確保することが可能です。
ただし、これらの努力は一時的なものではなく、長期的な視点
と持続的な取り組みが必要です。ブランドエクイティは時間と
共に育つものであり、その価値は一貫性と経験の積み重ねによ
って形成されます。そのため、これらの活動は経営戦略の一部
として組み込むべきです。
成熟期から衰退期のステージで生き残るには明確な差別化が必
要です。ブランド戦略は、この差別化を側面支援するための強
力な武器です。差別化×ブランド戦略を経営の中核に据えて取
り組まれることをご検討ください。
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昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。