『限られた資金で経営するために』 …向こう1年程度の資金繰り計画を持ちましょう。
インターネットを経由して個人から中古品を買い取り、インタ
ーネットを経由して個人に販売するというビジネスモデルで起
業したA社の1期目が終わりました。日本政策金融公庫からの
創業融資の調達をお手伝いしたのがお付き合いの始まりです。
A社は、創業当初、利益率は低くても大量に販売すれば採算は
合うという目論見で、他社よりも高い買取価格を設定していま
した。粗利益率が20%の設定です。しかし、粗利益率20%
で向こう1年間の資金繰りシミュレーションを行ったところ、
キャッシュフローを黒字化するためには、「資金が少ない」
「事務所スペースが狭い」「人員も少ない」、という現在のリ
ソースでは実現が難しい売上高が必須であることが分かりまし
た。
よって、A社の社長様は料金の改定を含めた粗利益率の改善に
取り組み、期末時点では粗利益率を30%程度にまで向上させ
ることに成功しました。さらに5%程度は改善できる見込みで
す。A社の1年目は当然ながら赤字でしたが、自己資金と日本
政策金融公庫の資金でつなぎながら、粗利益率30%~35%
のビジネスモデルを確立することができました。
2期目に入った先日、今期の年間資金繰り計画をA社の社長様
と立てました。一定のビジネスモデルは確立できたものの、現
状のままでは、すぐに資金がショートする見込みです。まずは
信用保証協会の保証付融資の調達に動き、500万円の資金を
調達することができました。創業赤字の状態で資金調達ができ
るのはこれが最後ですので、この資金を使って何としてもキャ
ッシュフローを黒字にしなくてはなりません。そのためのシミ
ュレーションを行いました。
考え方としては2通りです。事務所の拡張、広告費、人材に資
金を投入して一気にキャッシュフローの黒字化を目指す。もし
くは、借り入れた500万円を出来るだけ使わないようにして、
長く継続しながらチャンスをうかがう。前者の場合は計画どお
りに売上が立たなければ、あっという間に資金不足に陥ります。
後者の場合は、長く生きたところで今よりもじり貧になる可能
性があります。
やはり前に攻めようということになり、その前提でシミュレー
ションを行ったところ、「現在300万円の月商を半年以内に
600万円にしなくては資金がショートする。」という結果に
なりました。半年以内に売上を倍増させるためには、広告費を
大きく増やさないといけませんし、事務所も広いところに移転
しなくてはなりません。ただ、それを実行したところで、売上
が必ず増えるという保証はありませんので、決断するのは大変
難しいところです。
しかし、議論を重ねていくうちに、意外なところにボトルネッ
クがあることが分かりました。A社は既に月商400万円程度
の商品を持っているにも関わらず、人員不足でネットへの掲載
が300万円程度しかできていないということです。売上が読
めない広告費を投入するより、アルバイトを増員して掲載数を
増やす方がよほど確実です。早速アルバイト代15万円の増加、
売上高100万円の増加でシミュレーションを組み直してみる
と、資金繰りに余裕ができ、十分に実現可能な計画となりました。
中小企業は限られた資金で経営をしなくてはなりませんので、
向こう1年程度の資金繰り計画を持つことをおすすめします。
ポイントは、難しいものではなくシンプルな計画にすることで
す。弊所では資金繰り計画の立案をお手伝いしております。
ご活用ください。
昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。