『ブランド戦略とは何か!(その3)』 …ブランドは広告やオペレーションコストを削減してくれます。
…前回号のつづきです。ブランド戦略について考えてみましょ
う。
昔、『技術の日産』、『品質のトヨタ』と言われた時代があり
ました。これがブランドイメージですが、実際に日産の技術の
どの部分が具体的に優れているのかを説明できる人は多くあり
ません。あくまでもイメージです。同様に、トヨタのどの部分
の品質が競合他社と比較してどれくらい優れているのかを解説
できる人もあまりいません。まさに、このイメージがブランド
です。
我々は著名な芸能人に対して、それぞれイメージを持っていま
す。○○さんは…な人、△△さんは…な人、良く知る由も無い
のに、それでも決め込んでいます。これも芸能人のブランドで
す。
身近な例で言うと、友人や知人を、□□さんは…な人と紹介し
ます。これもあなたが勝手に思い込んでいる、□□さんのイメ
ージ、ブランドです。
貴社が提供する商品やサービス、それらを総括した貴社に対し
て、お客様はどんなイメージを持っているのでしょうか?また、
競合他社と比較して、お客様は当社にどのような優劣をつけて
いるのでしょうか?
ジョセフ・スティグリッツ(2001年にノーベル経済学賞を受賞
したアメリカの著名な経済学者)の考えに基づけば、完全競争
の世界では全ての商品が完全に同一であり、全ての参加者が等
しい情報を持つという理想的な状況が存在します。このような
状況では、ブランドという概念は存在せず、買い手は単純に価
格だけで商品を選択します。しかし、現実の市場は全く異なる
状況にあります。
現実の市場では、商品やサービスには差別化があり、消費者全
てが全ての情報を持つことはまずありません。ここでブランド
の役割が重要となります。ブランドは、商品の品質、信頼性、
価値といった情報を消費者に伝える信号になります。ブランド
が強ければ強いほど、消費者はそのブランドの商品を他の商品
よりも優れていると見なす可能性が高まります。これは、ブラ
ンドが信頼と品質の保証を提供するためです。
さらに、強いブランドは消費者の選択を促進し、購買決定を迅
速に行うための重要なショートカットを提供します。これは特
に情報過多の現代社会では重要です。また、ブランドは商品や
サービスに感情的な価値や象徴的な価値を付加することで、単
なる機能的価値以上のものを消費者に提供します。
したがって、スティグリッツの「完全競争の世界ではブランド
は存在しない」という見解は、現実の市場におけるブランドの
重要性を強調する一方で、ブランドが存在する理由、つまり市
場の不完全性と情報の非対称性を浮き彫りにしています。
我々は、自社の商品やサービス、それらを総括した事業体とし
て、お客様から好意的に選択されるイメージを作り上げる必要
があります。これがブランドです。そして、ブランドが正しく
構築されておれば、商品やサービスを販売する時に、それらの
説明が不要になります。広告やオペレーションコストが著しく
削減できます。
貴社の商品やサービス、それらを総括した貴社について、お客
様はどのようなイメージを持っておられるのでしょうか?『◎
◎な会社』、できればポジティブなイメージを持ってもらえる
ように、自社のブランドを築きあげていきたいものです。
昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。