『未来のことを説明しましょう』…未来のことは自ら説明しないと察してもらえません。
先日のご相談事例です。日本政策金融公庫より創業融資を受け
ている創業2期目の企業様より、「後3か月ほどで資金が枯渇
するため新たな融資を受けたい。」というご相談をお受けしま
した。
話を良くお聞きすると、創業融資を受けたときから事業内容が
進化しており、当初は国内だけの販売を想定していたが、海外
での需要も見込まれることが判明し、海外展開も視野に入れて
活動を開始しているとのことです。具体的に営業が進捗してい
る案件もあり、数か月内に1,000万円程度の海外売上も見
込んでいます。しかし、足元の試算表を確認したところ、売上
高はそれなりに上がっていますが、まだ創業赤字からは脱却で
きていない状況です。
私からは、「足元の業績が赤字であるため新規融資は簡単では
ないが、具体的な売上も見込まれていることから、日本政策金
融公庫の海外展開融資を申し込んではどうか。」と提案しまし
た。しかし、社長様によると、既に日本政策金融公庫には事前
打診済みであり、現在回答を待っている段階とのことでした。
日本政策金融公庫に提出した資料について聞いてみると、公庫
の担当者より「決算書はいただいているので試算表だけ送って
ください。」と言われたため、試算表のみを提出したとの回答
が返ってきました。
日本政策金融公庫から依頼された資料は確かに試算表だけです
ので何も間違ってはいませんが、既に提出済みの赤字の決算書
と、今回提出した赤字の試算表で事前審査を依頼しても、良い
回答がもらえるはずはありません。絶対に補足説明が必要です。
金融機関が過去の実績を重視するのは間違いありませんが、決
して未来を見ていない訳ではありません。具体的な売上の見込
み等がある場合は好意的に受け止めてもらえます。しかし、過
去の実績は財務諸表で分かりますが、未来のことはこちらから
説明しなければ金融機関は知る由もありません。
過去の財務内容で評価できる点がないならば、それ以外の評価
できるポイントがなければ審査に通る可能性は殆どありません。
試算表を送ってくれという指示に素直に従うのではなく、直接
お会いして未来の説明を行いましょう。
昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。