『節税を止めて多額の資金調達を行った事例』 …利益は納税額だけでなく、その後の資金調達力を左右します。
ある社長様と決算対策のお打ち合わせをした際、「税金を減ら
す方策はないか?」とご相談がありました。資金調達が上手く
行かないとのことで今期よりお付き合いを始めた社長様でした
ので、「納税額を減らすこと」と「資金調達を成功させること」
のどちらを優先しますかと聞き直したところ、「両方だ」とお
答えになられました。
納税額と資金調達はトレードオフの関係です。納税額を減らせ
ば資金調達は難しくなり、資金調達を成功させようと思えば納
税額を増やさなくてはなりません。このシンプルな原理原則に
逆らって、決算前に利益を一生懸命削り、決算後に一生懸命資
金調達に動いている社長様が多くいらっしゃいます。
先述の社長様にもご説明をし、再度どちらを優先させるかをお
聞きしたところ、「本当に利益を出せば資金調達ができるのか
?もし調達ができなかった場合は資金面で苦しくなる。不安だ。」
とおっしゃいました。
同社は増収増益で推移しており、このまま決算を迎えることが
できれば、融資を受けられる可能性は非常に高いと考えており
ましたが、社長様の不安を払拭するために、決算前に500万
円の資金調達を行いました。納税資金です。
その後、予定通り増収増益で決算を迎えることができ、資金調
達に動いた結果、総額で8,000万円の資金調達に成功しま
した。社長様は、「銀行の対応が全然違う。どうしてこんなに
融資をしてくれるのでしょうか?」と不思議そうでした。
どちらの社長様も、「利益を出せば融資を受けられるのは何と
なく分かっていたが、思ったよりも大きな金額を調達すること
ができた。」と口を揃えておっしゃいます。融資の上限は、利
益に対するレバレッジ効果が働くためだと感じます。
融資の上限はキャッシュフロー(純利益+減価償却費)に年数
をかけて算出します。キャッシュフローが100万円であれば、
7年分で700万円が融資の上限です。キャッシュフローが
500万円であれば、7年分で3,500万円となります。
400万円の利益の差で、資金調達力は2,800万円違って
きます。
税金面から考えても同様です。実効税率35%と仮定した場合、
100万円の利益で35万円、500万円の利益で175万円
の税金です。140万円の税金の差で、資金調達力は2,800
万円も違ってきます。
100万円の利益の圧縮が、700万円から1,000万円の
資金調達の機会を失わせています。資金調達が必要な企業様は
ご注意ください。
昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。