『中小零細企業の人事政策について』 …優秀な人材を採用できない!人が定着しない!理由は明白です。
■大企業と中小零細企業では背景が違います。
大企業は、従業員や就職希望者に対して、自社に対する愛社精
神、忠誠心、帰属意識等のブランドロイヤリティーを提供でき
ます。相応のBIGカンパニーや著名なベンチャー企業は、社
長個人の魅力ではなく、このブランドロイヤリティーが、継続
的な就業や就職動機として機能します。
一方、中小企業、まして零細企業にブランドロイヤリティーは
存在しません。社長個人がこの役目を果たさねばなりません。
言いかえると、「社長自身の器量やポテンシャルを越える人材
は採用できない、仮に採用できても辞めてしまう」、というこ
とです。故に、より優秀な人材を採用したいのなら、社長自身
が自らの器量やポテンシャルを高めていく努力を続けていくし
か方法がありません。
悲観論ではなく、事実として認識してください。人事はこの認
識から始めなくてはなりません。この前提条件を踏まえて、以
下のテクニカルな話に言及します。
■雇用の安定のための人事における3つの最適化とは…
◆人事業務で一番大切なことは、最適化です。
すべてにおいて最適化のポイントを求め続けることこそ人事担
当者の仕事です。中小零細企業では社長の仕事です。最適化が
なされておれば、人は概ね辞めません。採用もできます。離職
率が極端に高いのは、人が採用できないのは、最適化できてい
ないからです。
離職率が高いからレクリエーションを充実させる…間違えでは
ありませんが、本筋ではありません。採用できないから上手な
キャッチコピーを考える、採用媒体を見直す…間違えではあり
ませんが、本筋ではありません。
◆最適化とは…
1.【従業員の市場価値】と【会社が支払う給与】
2.【会社が従業員に求める業務】と【会社が支払う給与】
3.【従業員の能力】と【その従業員に求める業務】
の三つをバランスさせることです。
1.給与はその従業員の市場価値に適合させることが重要です。
給与はその人の市場価値に対して、安すぎても、高すぎてもい
けません。
○優秀な従業員を安く使えている、これは長続きしません。ど
こかで辞表がでます。
○割高な給与を支払っている、これも長続きしません。どこか
で社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。
2.求める業務に応じた給与を支払ってください。
給与は求める業務に対して、安すぎても、高すぎてもいけませ
ん。
○難解な業務を、薄給の人に求めてはいけません。どこかで辞
表がでます。
○安易な業務を、高給の人に割り当ててはいけません。どこか
で社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。
3.従業員の能力に合わせて業務を割り当ててください。
割り当てる業務は、従業員の能力に対して、難しすぎても容易
過ぎてもいけません。
○能力の低い人に、難解な業務を背負わせてはいけません。ど
こかで辞表がでます。
○能力の高い人には、それ相応の業務を担ってもらいましょう。
有効に活用しましょう。
言うは易く行うは難し…ですが、事業体の人事の肝は上記です。
(程度加減の)正解はだれにもわかりませんが、そのゴールの
無い道をきわめることが人事です。
社長にとって大切なことは、上記の理屈を理解して、程度加減
を是正しながら判断・行動することです。
◆絶対にやってはいけないこと…
○よくできる人材を、薄給を承知で便利に使い続けること
ある日突然辞表がでます。適正な給与(地位)の是正を実施し
なかったことが原因です。
○道理を越えた高給を支払って雇用する、慰留すること
長続きしません。社長の、組織内のアンバランスが限度を超え
た時、辞めさせる羽目になります。そして、大きな罪を作りま
す。その人の人生を歪めてしまいます。
○能力の低い人に、(精神論として)高度な仕事を任せること
訓練の機会・期間を設けずに、業務を何段階もステップアップ
させること、これに耐え得るのはほんの少数です。大半の人は
挫折します。訓練の機会・期間を経ずにやってはいけません。
同様の理屈で…
○薄給で優秀な人材を求めること
○薄給で採用して高度な仕事を求めること
○ただただ高給を訴求して人を採用すること
■最後に二つ…
1.人事をある程度適正に行えば、人はそれ程辞めません。
小さな会社で人が次々に入れ替わるのであれば、それは人事が
なされていないからです。是正が必要です。一方、それでも一
定の比率で人は辞めます。会社への不満とか?ではありません。
人それぞれです。可能な限り円満に送り出してあげることが得
策です。
2.力不相応の人材を求めてもうまくいきません。
これも達観が必要です。まずは(今の)力相応の従業員を求め
ましょう。優秀な人材が集まらないと嘆く社長様も少なくあり
ません。自社や自分の現状を棚にあげて、優秀な人材を求める
社長様がいますが、これも無いものネダリです。
◎良い会社になった時に、優秀な従業員が入社します。良い従
業員が集まるから良い会社になるのではありません。
◎今の実力相応の従業員が入社してきます。鏡の原理です。
◎まれに、将来性に賭けて入社してくれる人もいます。(今の)
力不相応な従業員の雇用は、社長自身が一本釣りするしかあ
りません。これをやってください。できなければあきらめま
しょう。
貴社の人事に対する考え方を、この機会にご一考ください。
昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。