『借入の目安について』 …適正な借入額は経営手腕によって変わります。
クライアント様から「当社の適正な借入額はどれくらいでしょ
うか?」とのご質問を度々いただきます。ご質問の背景には、
借入には危険なイメージがあるため、借り過ぎてはいけないと
いう思いがあるようです。
まずは、運転資金借入の適正な金額について考えます。運転資
金には、経常運転資金と増加運転資金があります。緩やかに売
上を伸ばそうと考えておられる企業様は、経常運転資金の範囲
内が適正な借入額となります。経常運転資金は以下の計算式で
求めることができます。
経常運転資金=平均月商×(売上債権回転期間+棚卸資産回転
期間-買入債務回転期間)
期日一括型の借入であれば経常運転資金と同額、約定返済付き
の長期借入であれば、約定返済を考慮して、経常運転資金の2
倍程度が適正な借入額と考えます。但し、適正な借入額を超え
る借入があっても、超えた分が現預金として滞留しているので
あれば、全く問題ありません。
売上の急拡大を狙う企業様は、現状の売上高を維持するための
経常運転資金に加えて、成長を促進するための増加運転資金を
調達しなくてはなりません。増加運転資金は以下の計算式で求
めます。
増加運転資金=月商増加見込み分×(売上債権回転期間+棚卸
資産回転期間-買入債務回転期間)
増加運転資金の調達は、売上の増加を見込んだ借入ですので、
計画通りに売上が増加すれば、借入額は結果として適正になり
ますが、計画通りに売上が増加しなければ、増加運転資金部分
が借入過多として残ってしまいます。
次に設備資金の借入ですが、設備資金の借入は、その設備の導
入で見込まれるキャッシュフローの増加額(減価償却費+純利
益)の7~10倍以内を目安にすると健全です。但し、増加運
転資金と同じく、見込みの売上やキャッシュフローを前提にし
た借入ですので、計画通りに利益をあげられなければ、たちま
ち借入過多となります。
借入に危険なイメージを持っている経営者様も多いと思います
が、経常運転資金の範囲内の借入、いざという時のために現預
金に置いている借入は適正で安全です。一方、先行投資のため
に借り入れる増加運転資金や設備資金の借入は、経営者様の手
腕によって、危険な借入にも適正な借入にもなり得ます。
昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。